千歳

物語の感想メイン

『MUSICUS!』感想

・澄√

働きもせず親にお小遣いをもらいつつ女の子に養ってもらい、感情や人間性や真っ当な生活全てを捨てて音楽づくりに没頭するBADEND√。ライターが瀬戸口なので心の陰鬱さやろくでもなさを描写させたらピカイチで、こっちまでどんどん苦しくなった。真っ当な人生からドロップアウトしてこうも辛い物語になったのが少しだけ自分と重なってより感情移入出来たのもあるかも。

バンドは解散し人と交わらず、時間の経過とともに状況は悪くなりついには死を考えるまで追い込まれていくが、絶対的音楽を模索し音楽の真理を創りだそうとする。そんななか養ってくれていた恋人は事故に遭い亡くなり、愛していないと思っていた彼女への愛に気付き泣きはするが、それでもそんな想いも音楽を作ることの前では無意味で、結局音楽作りにしか目が向かないという残酷で最高な話だった。

こうやって何もかも捨てて1つの事に賭けるのって一見上手くいきそうに見えるけれど、僕はやはり創り出す作品というのは人に向けての物であるべきで、絶対的な真理のような作品など存在しないと思っている。だからこそ人との繋がりを蔑ろにすることは絶対にダメだと思っているので、このルートは一切上手くいく気配がなく地獄のような空気感で終わるのが最高だった。

100/100点

 

・三日月√

先ほどの澄√では人の心に寄り添うことなく自分の信念を貫き修羅のような人間になったが、tureendである三日月√ではバンドメンバーと共に協力成功していく。その協力の末この物語が出す"音楽"というもへの解答は「人の感情を揺らした振動こそが音楽であるというもの。」である。

これって『サクラノ詩/刻』で草薙直哉が説いてる人と共にある弱き神、『素晴らしき日々』で水上由岐が言った足跡は無いけど立ち止まった時は足になってくれる神じゃない?この2作を信奉しているので、好きなライター瀬戸口廉也が『MUSICUS!』でこの解答を提示したことにめちゃくちゃ感動した。

そうだよ結局人間ていうのは人の繋がりが全てなんだよ。理論上誰とも心を通じ合わせず1人で生きていくことはできるかもしれないけれど、それじゃ生きているだけだ。人間の1番素晴らしいところは心があることで、その心を成長させることができるのって相手の事を思いやったうえでの人との交わりなんだよね。僕は物語に救われてきた側の人間だけれど、その物語を作るのも人間、音楽も美術も全部人間の人間による人間の為の物なんだよ(人生の為の芸術派)

まあ意味わかんないことつらつら書いたけど、人間よ!人と交われ!外に出るハードルが高けりゃまずはインターネットでの交流からでいい、そうして人に寄り添って誰かの心に少しでも影響を与えられたらもうそれって音楽なんじゃねえかなあ...

100/100点

 

・生まれた意味と価値

 

これ何気に感動した。人間意味を感じないと何かをするのは辛いのに、一番肝心な生まれた意味とか生きる意味を見出すのってすごく難しいと思うのね。でも一度生まれた意味/生きる意味/死を考えるともうその先の人生ずっと付きまとってくるし、だからって答えなんて出るもんじゃねえしなあと思っていたのだけれど、そこでこの意味と価値を分離する考え方に出会った。生の意味に答えを出すのは難しいけど、人と交わり寄り添うことで自分に価値が出てくるし、そうやって人の救いになることが結果的に自分の生きる意味にすり替えられていくんじゃないかなあと思った。

まあそんな単純な話じゃないかもしれないけれど、まず人に優しくしてみよう、それが色々なことに悩み苦しむみんなと俺の生きる意味/理由になってくれるかもしれないから。

 

・まとめ

澄と三日月√はこの先何回もやり直すであろう大傑作だけれど、他のふたつの√はまあ面白いくらい。今回の再読もこの2つのルートだけだし。感想でアツくなっちゃったからまとめはあっさり終わらせていただく。

 

100/100点